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 G-SPOTなどという名前を、よくもつけたものだと思う。女性の膣の中にある性感帯で、クリトリス以上に感じる場所だとされる。それが本当かどうか確かめたことはないが、医者が言うのだから、おそらくそうなのだろう。それと同じ名前の店が、ナナプラザの2Fにある。


 ダンス用のステージを3つ持つ店は、おそらくここだけではないかと思う。入り口から入ってすぐ左手に、6~7人が踊れる小さなステージがあり、店の中央に14~5人が踊れる大きなステージがある。さらに右奥に、小さいステージがある。最近は使われていないが、店の左奥のソファー席の裏は、ガラス張りのシャワーブースになっており、以前はシャワーショーもやっていた。
 
 私の特等席は、入ってすぐ右手のひな壇の客席だ。ここだと、左の小さいステージと中央の大きなステージを、どちらも見ることができる。右奥のステージはあまり使われないので、無視しても構わない。何度か通っていると、そういうこともわかってくる。
 
 
 ある日、いつもの特等席で見ていると、ダンスの順番待ちをしていた女の子が、横に座っていいかと言ってきた。いわゆる営業だ。私は基本的に、営業されることを好まない。無視していると、今度は給仕の子に応援を依頼したようで、給仕の子が「この子、どう?」と勧めてくる。「今、ステージを見ているところだから。」そう言って断った。
 
 ダンスの順番が来て、その子は左手の小さいステージに上がった。ときおりこちらに視線を送ってくるが、色仕掛けで誘ってくるようなことはしない。ちょっとはにかんだような笑顔を見せながら、まじめに踊っていた。まじめに踊っている子を見ると、ついそれを注目してしまう。ましてやかわいい子なら、なおさらだ。
 
 私と視線が合った時、彼女は身振りで、ドリンクを飲ませてくれと要求してきた。十分に楽しませてもらったという気持ちだったので、私は頷いてそれを認めた。彼女はすぐにステージから降り、私の隣にやってきた。名前をビーと言う。
 
 痩せてはいないが、それほど太ってもいない。丸顔で、その体型からも幼さを感じさせる。19歳だと言うが、本当かどうか。おそらく働き始めて間がないのだろう。何度か通っているが、始めて見る顔だった。
 
 
 数日後、またG-SPOTに行った。ビーは私を見つけると喜んでやってきた。前回はペイバーの要求を断ったのだが、今度は断る理由もなかった。しばらくしてビーが私服に着替えてくると、本当にどこにでもいるような普通の女の子に見えた。
 
 私も徐々に、ビーのことが気になるようになってきたのだろう。ある日、G-SPOTへ行くと、ビーがいなかった。「なんだ、今日は休みか。それとも、すでにペイバーされたのかもしれない。」そう思うと、なんとなく落胆している自分に気づく。彼女に会うことが重要な目的だったので、目標を見失った気分になるのだ。
 
 
 ある日、私はナナプラザのエスカレータを上がり、G-SPOTに行こうとしていた。そのとき、向こうからファラン(西洋人)の男と一緒にやってくるビーが見えた。「あっ、もうペイバーされたんだ。早いなあ。」そう思ってちょっと気落ちしたが、それも仕方がないことだと思って歩いた。
 
 すれ違う時、私はチラとビーを見て微笑んだ。その客に気付かれないよう気遣いながら、「がんばれよ」とエールを送りたかったのだ。するとビーは、こわばったような表情を見せた。まるで浮気の現場を恋人に見られてしまったかのような、罪悪感を感じているような顔つき。「そんなに気にしなくていいのに。私はあなたの恋人じゃないんだから。」そう思ったが、ビーのその顔が心に残った。
 
 
 次に会った時、ビーは私に言った。「この仕事は、私はあまり好きじゃない。たぶん、いつか辞めると思うわ。」私はまるで関心がないかのように、「ふーん、そうなの。」と言っただけだった。今にして思えば、あれがビーの最後の言葉だった。本当はもっと、言いたいことがあったのかもしれない。
 
 数日後にG-SPOTへ行くと、もうビーはいなかった。給仕の子に聞くと、やめて田舎に帰ったと言う。それが本当のことかどうか知らないが、それから二度と、ビーと会うことはなかった。彼女はきっと、まじめ過ぎたのだろう。私とすれ違った時の罪悪感に満ちた顔。その顔を私は、今も忘れられずにいる。