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 先日の3月11日は、あの東日本大震災の2周年でした。もうあれから2年も経過したのですね。あの翌日、私は「日本人として」という記事を書きました。直接助けに行くこともできない私としては、普段通りの日常を送ることが、巡り巡って支援につながるというような内容です。


 たしかに、複雑な思いはありました。日本で未曾有の大災害が起こっているときに、夜遊びなんかで浮かれていていいのか?そういう気持ちを持たなかったわけではありません。けれども、そこで私が夜遊びを自粛したからと言って、誰の助けにもならないことも事実です。
 
 私ですら、夜遊びを自粛すべきかと悩んだくらいですから、普通の人なら、「こんなときはやめておこう」と思われて当然です。その結果、歓楽街で働く人々の儲けが減り、日本へ遊びに行く人が減り、日本の経済が悪くなり...。風が吹けば桶屋が儲かるの話じゃありませんが、そんなふうにマイナスの連鎖が続くことになると思いました。
 
 もちろん、私一人が遊びに行くか行かないかで、経済全体が影響されるわけはありません。けれども、その一つひとつの行為の積み重ねで、全体ができあがっているのも事実です。私は、経済を好転させるという大きな山を作るために、もっこ1杯の土を運ぼうと思ったのです。
 
 
 そのあとの記事を読むと、日本で様々なイベントが自粛されていることを書いていますね。花見だとか、マラソン大会だとか。自粛したいと思う人が参加しないことは自由ですが、他の人に自粛させるのはやり過ぎだと思いました。むしろこんなときだからこそ、元気になるためにイベントをやった方が良い。私は天邪鬼ですから、そう主張してきたのです。
 
 2年経ったことで、気持ちはかなり癒えたと思います。もちろん、人それぞれですけど。その間にも、震災で亡くなられた人よりもはるかに多い人が、様々な理由で亡くなられています。有名な方の死は、ニュースで知ることができます。「あー、あの人も亡くなられたのか。」そう思いながら、自分もまた、着実に死に近づいていると思うのです。
 
 
 私がゴーゴーバーに通うようになって何年も経ちましたが、その間にも、何人かのゴーゴーバー関係者が亡くなっています。日本人に殺されたゴーゴーガールもいましたね。ガンで亡くなった給仕の子やキャッシャーの子もいました。オートバイの事故で亡くなったコヨーティーもいました。
 
 彼女たちが亡くなったときでも、ゴーゴーバーは営業されていましたし、そんなことも知らない客がたくさんやってきていて、大いに遊んでいました。そういうのを見ていると、「世の中、こういうものだよなあ。」って思います。
 
 
 そんな私も、姿が見えなくなった女の子たちのことを、ずっと気にしているわけではありません。たまに「最近、見なくなったなあ。どうしたんだろう?」と思うことはあっても、たいして心配しているわけでもありません。「まあ、何とかやってるだろう。」そう思って、また忘れてしまうのです。
 
 先日、デジャブで飲んでいたら、リオから移ってきた給仕の子に言われました。「ソムちゃん、またリオに戻ってきたよ。」そう言われて、そう言えばそんな子がいたなあと思いだしました。いなくなる前に彼女は、ナナプラザの他の店に移ると言っていたのです。でも、その言われた店では、一度も姿を見ませんでした。たまたまだったのかもしれませんけどね。
 
 
 給仕の子から話を聞かなければ、私はずっと彼女のことを思い出さなかったかもしれません。聞かされたから思い出したのです。他にも、再会することで、「こんな子がいたなあ」と思い出すことがよくあります。特にティーラックは知っている子が多いこともあって、そういうことが多いです。先日も、懐かしい顔を見かけました。
 
私:「あれっ、久しぶりじゃない。どこへ行ってたの?」
女:「田舎に帰っていたのよ。痩せたでしょう?」
私:「うん、すっごく痩せた。痩せたのはいいけど、おっぱいが小さくなったねえ。以前は大きかったのに。」
女:「子どもを産んだのよ。」
 
 それ以上の深い話はしませんでしたが、いろいろとあったのでしょう。以前なら、相手の男は誰なのかとか、けっこうずけずけと聞いたものです。でも、それを聞いたからって、どうなるものでもありません。しだいにそういうことに首を突っ込むのが面倒になりました。
 
 
 田舎に帰って太ったとか、黒くなったという子はいっぱいいます。けれども、痩せたとか白くなったという子は珍しいですね。この日は他にも、田舎に帰っていたという子と会いました。白くなっていたのでびっくりしたのですが、3週間くらいの帰省から戻ってきたばかりだったようです。
 
 「もうこの仕事も嫌になったから、田舎に帰ったのよ。」そう言うので、思わず聞いちゃいました。「だったらどうしてまた戻ってきたの?」彼女は笑ってました。聞くまでもないことです。お金がなくなったけれど、他に効率よく稼げるところがないから、それで戻ってきたのでしょう。
 
 
 私がとやかく言うことでもありません。この仕事をしたくなければ、辞めて他で働けば良いのです。タイは好景気ですから、仕事ならいくらでもありますから。でも、ろくに学校にも行っていない彼女たちには、これだけ稼げる仕事は他にないのでしょう。
 
 それぞれの人生に、その人にとっては重要な喜びがあり、また悲しみがあります。そんな多くの人と出会ったり別れたりしながら、お互いに影響を与え合っているのが、この世というものでしょうか。ふと、「思い出さない子の中に、ひょっとしたらもう生きていない子がいるのかも。」と思いながら、ビールに酔いしれたのです。