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 先日の日曜日、バンコクの数ヶ所で反政府派による大規模な集会が行われました。2月に予定されている選挙に反対し、選挙を妨害するために実力行使も辞さないと言っているようです。母体の民主党も呼応し、選挙ボイコットを決めました。これで旧権力層である司法も、また選挙無効判決を出しやすくなったわけですね。
 
 タクシン派が憲法を改正しようとしたことに反発した反タクシン派が、自ら憲法が定める民主主義を無視して、選挙の妨害をしようとしたり、選挙によらない暫定政府を作ろうとしています。前にも書いたことですが、要は「自分たちが正しい。相手が間違っている。」と、何の根拠もなく主張しているだけです。
 
 その自らの主張を正当化するために、あれやこれや理屈をつけているだけで、これを一般的には屁理屈と言います。アメリカや日本など、西洋諸国が選挙を支持していることに腹を立て、アメリカ大使館を占拠しようという主張もありましたが、さすがにそれは自重したようですね。それをやったら、それこそ世界を敵に回すことになり、仮に政権をとれたとしても、経済制裁などを受ける可能性もありますから。
 
 軍にクーデターを期待していましたが、軍は逆に選挙を支持する声明を出しました。軍が動かないため、一般人を動員することで、民衆の力による政権転覆(要はクーデター)を目指す方針なのでしょう。だって、どんなに現政権に選挙を延期しろと言ったって、憲法で定められているのですから、そりゃ無理と言うものです。現政権が憲法を無視するわけもないので、最終的には実力行使しか残されていないはずです。
 
 
 あとは、司法がまた超法規的な判決を出すかどうかですね。韓国の司法が、国際条約を無視した判決を出して、そのご都合主義を世界にさらしてしまいましたが、タイの司法も似たようなものです。取るに足らない違反を過大に評価して、選挙に勝った与党を解党してしまった(司法によるクーデターと呼ばれる)のですから。
 
 今回も、現政権が憲法改正を行おうとしたところ、それが憲法違反だという判決を下しました。選挙で選ばれた国会議員が、法に定められた手続きに則って決定した憲法改正を、憲法違反だと断定したんですよ。恣意的に権力を握ろうとした行為だからという理由で。
 
 その一方で、反政府派が集会を行っていることは、合憲だと裁定しました。民衆が集まって、政治的な主張をする権利はあるということのようです。その彼らが、法を無視して特定の場所を占拠し、政府や近隣に多大な迷惑をかけていることは、おかまいなしということなのでしょう。こういうのを一般的に、ダブルスタンダードと言います。
 
 つまり、自分たちに敵対することは、何がなんでも許さんということだけなのです。タクシン派がやることはすべて悪で、反タクシン派がやることはすべて善。それが、公平であるべき司法の判断なのです。法が支配せず、人が恣意的に判断したことがまかり通るなら、それは独裁と同じです。
 
 
 そんな意味不明な主張をしている反政府派ですが、勢いは衰えません。「タクシンが嫌い」という人が、それなりに多いからでしょうね。先日の集会の時も、まるで学生コンパのノリで、「タクシン・オークパイ!、インラク・オークパイ!(タクシンは出て行け!インラクは出て行け!)」と叫んで、気勢を上げて盛り上がっていました。
 
 ああいうのを見ていると、まるで集団によるイジメのように見えてしまいます。同じタイ人同士で、「お前は出て行け!」だなんて。反政府派のリーダーが演説で、タクシン氏の子どもに対して、「いずれアラブへ出て行くのだから、今のうちにアラビア語の勉強でもしろ!」というようなことを言ったそうです。それに対して、子どもの権利を守る団体が、それを批判する声明を出していました。
 
 坊主憎けりゃ袈裟まで憎いと言いますが、良識も何もなくなってしまったのでしょう。リーダーにしてみれば、自分の政治生命どころか、本当に生命がかかっていますから、必死なのかもしれません。そんな良識もないリーダーに、多くの人がついて行くのですね。それもまた、タイの現実です。
 
 
 デモや集会が激しくなった11月以降、明らかに海外からの旅行者が減っています。予約のキャンセルが相次ぎ、ホテル業界では「せっかくの稼ぎ時なのに…」と、恨めしく思う声が聞かれます。日本は昨日まで3連休でしたが、バンコクを避ける傾向があるようです。空港から直接パタヤへという人が、増えたように思います。
 
 在住者は、日本大使館から「デモに近づかないように」という注意があっても、「あんなの大したことないよ」と笑っている人もいます。実際にそうなのでしょう。ごく一般人が大勢参加しているのですから。でも、それに対して腹を立てる人たちがいることも事実です。ですからそこで、拳銃や爆弾が使われる可能性もあるし、事実、そういう事件が数件ほど起きています。
 
 
 今日はクリスマス・イヴですが、平和な気持ちで多くの人が過ごせるでしょうか。憎しみや恨みのあるところに、平和はありません。平和は、まず心の中に愛を取り戻すことから始めなければならないのです。「◯◯が嫌い」と言う時、そこに愛はありません。愛はすべてを受け入れ、すべてを許すのです。
 
 憎しみや恨みの気持ちで戦って勝利しても、そこに平和は生まれません。新たな憎しみや恨みを生み出すだけです。そうやって互いに傷つき、「もういい、やめよう。」と思って戦うことを放棄するまで、平和はやってこないのです。
 
 
 まだ、とことん傷つけ合わないといけないのでしょうか?そうまでやらないと、「もうやめよう」とは言えないのでしょうか?人間とは、本当にまだまだ幼い存在なのですね。ちょっと想像してみればわかることなのに、まだ自分だけが勝利できるという妄想にとり憑かれているのですから。
 
 これは何も、タイの政治だけの話ではありませんよ。会社や地域という集団の中で、家族や夫婦という人間関係の中で、どこででも言えることなのです。自分だけ勝利ということはあり得ません。それが腹の底からわかるまで、人は互いに傷つけ合わなければならないのかもしれませんね。クリスマス・イヴのこの日に、世界の人々の平和を祈ります。