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 今日のニュースで、陸軍が戒厳令を発令したことを知りました。すわクーデターかと思いきや、どうも2006年の戒厳令とは様相が違っているようです。日本でも報道されたため、心配されている方も多いでしょう。現時点での状況と、見通しを書きます。
 
 
 軍は、「クーデターではない」と明言しています。政府は通常通りに機能していると言うのです。ただ、政府の治安維持権限を取り上げて、軍に置いたとのこと。そんなことを軍の一存でできるというのが、シビリアン・コントロールが当然と考えている日本人からすると、信じられないところですね。
 
 軍は、各TV局にも兵士を配置したそうです。これは、TV局の協力を求めるためとなっています。おそらく、不安を煽るような報道を慎むようにということなのでしょう。国民に対しては、パニックにならないよう訴えています。また、集会を行っているタクシン派、反タクシン派の勢力に対しては、移動(デモ)を禁止しました。
 
 反タクシン派は、すぐさまデモをしないと明言しました。タクシン派のUDDは、選挙が行われるまで抗議行動は続けると言っています。もともとデモ行進はしてなかったはずですから、集会を継続するということなのでしょう。おそらくこれは様子見で、軍の行動次第で柔軟に対応するものと思われます。
 
 
 今後の見通しですが、軍が怒りの鉄槌を振り上げたような形になっています。タクシン派、反タクシン派双方にとって、これは意表を突かれたものと思います。なので、当面は様子を見る形になるかと思います。タクシン派も、軍がクーデターを起こそうとするなら徹底抗戦するかもしれませんが、そうでないなら、つまり将来の選挙が保証されるなら、軍とぶつかる必要性がありません。
 
 そこで問題になるのが軍の意図です。これは2通り考えられます。まずは、軍が今回は国際情勢などを考えて、民主主義や法治主義を守ろうと考えた場合です。いったんは7月20日に予定された下院の選挙ですが、独立機関の選挙管理委員会が難色を示しています。また反タクシン派の妨害に合うかもしれない、というのが表向きの理由です。
 
 選挙管理委員会など独立機関(憲法裁など)は、反タクシン派が実権を握っているとされています。ですから、反タクシン派の急先鋒であるステープ氏を、応援したいという気持ちがあるものと思われます。そういう不透明な状況なのも、反政府派が抗議行動をやめないからです。選挙をやれば、また妨害すると主張しているからです。そこで軍は、反政府派の過激行動を抑えるために、今回の措置を行ったとも考えられます。
 
 
 もう1つは、タクシン派と反タクシン派の激突を回避しながら、反タクシン派が有利に政権につけるようにすることです。つまり今回の措置の目的は、反タクシン派の集会場で爆発や発砲が頻発しているため、それを阻止し、さらに両派が直接激突することがないように、事前に抑えておこうというもの。
 
 そうしておいて、司法によるクーデターが粛々と進められるようにお膳立てをする。過激なステープ氏らの要求は認めないものの、タクシン派が再び権力を握ることも許さない。そして、タイの混乱をこれ以上続けさせない。そのための戒厳令とも考えられます。
 
 
 まだどうなるかはわかりません。選挙に関しては、選挙管理委員会は、立候補の郵送を認めるように規則を変えたそうです。これにより、前回のように立候補の受付所に直接出向く必要がなくなるため、候補者が受付所に入るのを実力で妨害することは不可能になります。したがって、立候補ゼロの選挙区が生まれる可能性はほとんどなくなりました。ただまだ、投票を妨害する手段は残されています。
 
 一方で、政府関係者の汚職疑惑による訴追も行われており、また前首相インラク氏の上院での弾劾も残っています。したがって、それらの司法的な手段を駆使して、有力タクシン派政治家の公民権停止などを行って、事実上、選挙をしても候補者を立てられない状況に追い込む手段が残されています。
 
 
 2006年のクーデターのとき、私はナナプラザにいました。友人から電話で、クーデターの知らせを受けたのです。あたりは平穏そのもの。誰もクーデターに気づいていないようでした。私はすぐに帰ってTVを見て、大変なことが起こりつつあるんだと認識しました。しかし次の日も、普通通りに出勤しましたけどね。
 
 今日も、私にとってはいつもと変わらない1日です。おそらく、今夜もいつもと同じでしょう。ならば、戒厳令下でゴーゴーバーがどうなっているか、見に行きたくなりますよ。おそらく、いつも通りに営業していると思いますよ。戒厳令の目的は、タクシン派、反タクシン派双方の、過激な行動を抑制するため。一般市民に影響を与えるものではない。それが、私の見方です。