1週間ほどして、またマサ先輩と居酒屋へ行った。
給料は手取りで20万円ほどなので、いつもの安い店だ。
 
 
「先輩、パスポートを受け取ってきましたよ。」
「よしよし。海外旅行に必要なのは、まずはパスポートだかんな。その次が航空券とお金。クレジットカードは持ってるよな?」
 
「はい。会費無料のやつなんですが、VISAがついてます。」
「上等上等。VISAかMASTERなら何の問題もねえよ。」
 
「先輩、他に何か用意しておくものありますか?」
「海外旅行保険もツアーにセットして入ったし、あとは心の準備くらいだな。」
 
 
そう言ってマサ先輩は、出国から入国、ホテルまでの流れを説明してくれた。
現地通貨のタイ・バーツのレートや、両替場所についても教えてくれた。
 
 
「ホテルは、ラマ9通りのマックスホテルみたいだな。ここはJFが700バーツかかるから、そのつもりでな。」
「なんすか、ジェー・エフって?」
 
「ジョイナー・フィーと言ってな、早い話が連れ込み料よ。1部屋1人でチェックインするだろ。そこへ他の人を泊めるわけだから、追加料金を取られるってわけよ。」
「えっ、それって当たり前じゃないんすか?普通ツインやダブルなんか、1人いくらって書いてあるし。」
 
「ところがタイは、だいたい1室いくらなんだよ。定員が2名の部屋なら、1人で泊まろうと2人で泊まろうと、料金は同じなのさ。だからJFが不要のホテルもけっこうあるんだぜ。」
「ふーん、そうなんですか。700バーツだと約2,000円だから、ちょっと損した気分ですね。」
 
 
空港からホテルまでは、現地ツアーガイドの送迎があるらしい。
面倒そうな出入国手続きも、先輩と一緒だから何とかなるだろう。
そうすると、あとは向こうで何をどうするかってことだけど...。
 
 
「先輩、この前、女を現地で調達するって言ってたでしょ。あれ、どういう意味ですか?ひょっとしてナンパですか?ボク、無理っすよ。」
「まあナンパみたいなもんかな。でも、向こうがナンパされたがってるんだから、簡単簡単。」
 
「はー、でもボク、あまり女性と話をしたことないし、何を話したらいいのか...。それに、タイ語はしゃべれませんよ。」
「バーカ、オレだってタイ語はしゃべれねーよ。片言の英語で十分さ。」
 
 
先輩にとっては簡単でも、ボクには荷が重い。
日本語を使っても、女性とは会話が続かないのだ。
ましてや英語だなんて。
 
 
「まあそんな不安そうな顔をするな。大丈夫、オレに任せておけ。ちゃんと童貞喪失させてやっから。」
「先輩、お願いしますね。」
「そうそう、まずは向こうでの遊び方を教えてやろう。」
 
 
そう言ってマサ先輩は、現地での夜遊びを一通り説明してくれた。
 
カラオケ:キャバクラのようなもので、カラオケもできる。女性を連れ出せる店とそうでない店がある。
MP(マッサージパーラー):ソープランドのこと。巨大な金魚鉢の中にひな壇があって、そこに座っている女性を見て選べる。
マッサージ:普通のタイマッサージからファッションマッサージのようなところまである。普通のマッサージ店でも、スペシャルと言っていろいろできることもある。
ゴーゴーバー:ビキニ姿やヌードの女性がステージ上でポールダンスをしているパブ。席に呼んで話をしたり、連れ出すこともできる。
援交パブ:援助交際を求める女性と、男性客との出会いの場。店は場所を提供しているだけなので、連れ出し料がいらない。
立ちんぼ:道路に立っていて客を誘うコールガール。
ノーハンドレストラン:食事の世話をしてくれる女性がいるレストラン。連れ出すこともできる。
3P・SM専門店:3PやSMなどのアブノーマルなことをさせてくれる専門店。
 
 
「タク、おめえはどんなことをしてみたいんだ?」
「いやあ、特にないっすけど、立ちんぼは怖そうですね。」
 
「そりゃーリスクもあるさ。睡眠薬強盗なんかもいるしな。そういう点じゃあ援交パブも同じだけどな。ただ、素人が好きな男とか、なるべく安く済ませようとすると、そういうところを選ぶみたいだな。」
「先輩は、どこがいいんですか?」
「オレか?オレは一通り経験してるからよ。アブノーマルは趣味じゃないからやってないけど。」
 
 
それからしばらく、それぞれの遊び方や先輩の体験談を聞かされた。
ボクは、妄想が大きく膨らんで、だんだんと沈んでいた気持ちが消えていった。