旅行の日は、意外とすぐにやってきた。
この時期にまた休暇をとるということで、少し風当たりが強かったからだ。
そのために残業して仕事をこなしたので、あっと言う間だったのだ。
航空便は、行きがJL717(10:30成田発)だった。
日本の航空会社ということで、少し安心した。
 
 
「先輩、おはようございます。いよいよですねえ。なんか緊張しちゃうなあ。」
「なーに、すぐに慣れるさ。それより、ちゃんと持ってきただろうなあ、パスポートと金。」
「はい、大丈夫です。このとおり。」
 
 
JR日暮里駅でマサ先輩と待ち合わせをして、京成スカイライナーに乗り込んだ。
成田ではツアー会社のカウンターで航空券を受け取り、チェックインを済ませた。
出国審査もなんなく通過し、1時間ほど待って飛行機に乗った。
 
 
「先輩、JALのスッチーさんって、みんなきれいですね。」
「おめえはオノボリさんか?おい、携帯電話の電源は切っておけよ。」
「はい、先輩。あっ、動き出した。いよいよですね。」
 
 
少し興奮気味のボクを見て、逆にマサ先輩は無口になってしまった。
機内では特に何事もなく、約6時間の空の旅が終わった。
入国審査、預け荷物の受け取り、円からバーツへの両替、そして税関を通過して表に出た。
そこで待っていた現地ツアーガイドもすぐに見つかり、一緒に車へと向かった。
 
 
「先輩、暑いっすね。なんかムーッとしますよ。」
「タイだかんな。この暑さを感じると、タイに来たなあって気がするぜ。」
 
「ココデ、クルマ、マチマス。タイハ、ハジメテデスカ?」
「はい、初めてです。日本語、上手ですね。」
「イエ、マダマダデス。ハイ、クルマ、キマシタ。キヲツケテ、ノテ、クダサイ。」
 
 
ワンボックスカーに乗り込んだのは、我々の他に3人。
みんな男性で、中年が1人、若者が2人で、みんな一人旅のようだった。
クルマは30分ほど高速を走って、降りてすぐにホテルに着いた。
ラマ9世通りにあるマックスホテルだ。
 
 
ここで降りたのは我々2人だけで、他の3人は別のホテルへ行くらしい。
ツアーガイドはチェックインの途中までいたが、他の客を送っていくと言って立ち去った。
ボクと先輩は、同じフロアの隣り合った部屋に案内された。
 
 
部屋の中を簡単に説明してもらって、チップを20バーツ渡した。
初めてチップを渡すという経験をして、外国に来たんだなあと改めて思った。
そして、隣の先輩の部屋に顔を出した。
 
 
「先輩、これからどうするんですか?」
「今5時前だから、少し休んでから6時くらいに出かけようぜ。」
 
「今日はどこへ行くんですか?」
「そうさなあ、3晩あるから今日はナナプラザへ行ってみるべえ。ゴーゴーバーがどんなところか見せてやるぜ。」
 
「へえー、ゴーゴーバーですか。女の子が裸で踊ってるとこですよね?」
「うーんまあな。ナナプラザだと、だいたいビキニだけどな。まあ行けばわかるさ。」
 
 
ボクは部屋に戻ってベッドに寝転がり、ただ時間が過ぎるのを待った。
何もすることがなかったので、本当は先輩の部屋で話をしていたかったのだが、マサ先輩に休むからと言われて、仕方なく戻ってきたのだ。
天井を見上げて、ゴーゴーバーがどんなところなのか想像してみた。
 
 
いつの間にかうとうとと眠ってしまったらしく、電話のベルの音で目覚めた。
寝ぼけながら受話器を取ると、先輩からだった。
 
 
「オイ、何してんだよ!?もう時間だぜ。」
「あっ、先輩。すんません。寝てました。」
 
「バッカ、何してんだよ。早く準備して出て来い。ロビーで待ってるから。」
「はい、すぐに行きます。すんません。」
 
 
電話を切ってから、あわてて出かける準備をした。
パスポートと航空券は、部屋にあるセキュリティーボックスに入れた。
パスポートのコピーを財布に入れてあるので、パスポートそのものは持ち歩かない方がいいと言われたからだ。
ウエストポーチの財布を確認して、部屋を飛び出した。