次の日の朝、9時半にレストランへ行くと、マサ先輩はもう先に来ていた。
 
 
「おはようございます。」
「おう、おはよう。夕べはどうだった?」
 
「いやあ、なんか用事があるって、2時くらいに帰っちゃいましたよ。先輩はどうだったんですか?」
「オレか?オレはさっき帰したばかしさ。寝させてくれねえから、まいっちまったぜ。」
 
 
洋風の朝食を摂りながら、昨夜のことなどをお互いに話した。
マサ先輩は、これから昼まで寝たいと言う。
それで、1時にロビーで待ち合わせて、ショッピングへ行くことにした。
 
 
ボクは特にすることもないので、ホテルの周りを歩いてみた。
しかし、特に興味を引くものもなかったし、日が当たると暑かった。
それですぐに部屋に引き返して、ベッドに横たわった。
 
 
バンコクに来て2日目だというのに、もう随分と時間がたったような錯覚を覚える。
今まで25年間生きてきて、一度もしたことがない経験をしてきたのだ。
そう思うと、昨日からの出来事がとても愛しい反面、抗いようのない渦に巻き込まれて、どこか遠くへ連れ去られて行くような気もした。
 
 
女性というものを、初めて知った。
甘美ではあったが、どこか空虚さも感じていた。
レインボー1の子は、どんな子だったのか?
顔もまともに思い出せない。
 
 
ただ女であれば何でも良かったのだろうか?
そうではないと言葉にしたかったが、現実はそうとしか言いようがない。
自己嫌悪すべきなのか?
しかし、純粋に女性を求める本能を、ただ否定するばかりが文明なのか?
 
 
まさに女性の中に入って行こうとするする瞬間、ボクは無条件に喜びを感じていた。
今まさに、最も望んでいたことが実現する。
ゴールをはやるランナーのように、ボクはただ無我夢中で突進したのだ。
もしその喜びを否定するなら、ボクはボク自身を否定しなければならない。
 
 
頭の中をぐるぐると、様々な思いが巡っては消えて行った。
時おり思考を弄ぶのを中断し、我に返ってみた。
時計を見て、まだ時間が来ていないことを確認する。
そしてまた、思考の樹海の中へと入って行った。
 
 
 
セットしておいたアラームが鳴って、ボクは目を覚ました。
いつしか眠ってしまったらしい。
アラームをセットしておいて良かったと思った。
 
 
ロビーでマサ先輩と合流し、タクシーでMBK(マーブンクローン)ショッピングセンターへ向かった。
マサ先輩がいろいろ買いたいものがあるというので、買物について回った。
FUJIという日本料理屋があったので、そこで遅い昼食を摂った。
 
 
「先輩、ここの日本料理って、まあまあいけますね。」
「まあ、タイでは有名みたいだかんな。最近は日本食ブームもあって、タイ人もよく食べるみたいだから。」
「そう言われてみると、周りはほとんどタイ人っすね。」
 
「タク、これからおめえどうする?どっか行きたいとこあるなら付き合うぜ。」
「いえ、ボクは別に。特に買うものもないっすから。お土産は、帰りに空港で買えばいいと思ってますから。」
 
「そっか。じゃあ、あと1つ買いたいもんがあっから、それ付き合ってくれ。それで1回ホテルに戻って、また6時半くらいに出かけようぜ。」
「いいっすよ。で先輩、今晩はどこへ行くんすか?」
「メインは今日だからよ。ソイカウボーイへ行ってみようぜ。おめえもゴーゴーバーが嫌いじゃないみたいだしな。」
 
 
話がまとまったので、先輩の買物に付き合った後、我々はホテルに戻った。
シャワーを浴びて、よくわからないTVを見て時間を過ごし、6時半にロビーへ降りた。
すぐに先輩もやってきたので、タクシーでソイカウボーイへと向かった。