バカラの2Fへ上がると、そこも客がいっぱいだった。
奥にカウンターがあったので、そこへマサ先輩と二人で並んで座った。
カウンターに背を向けるようにしてステージを見ると、6人ほどの全裸の女の子たちが踊っていた。
 
 
「こっちは明るいからよく見えますね。」
「ああ、ここは照明に気を使ってるからな。女の子がみんなきれいに見えるよ。」
 
 
踊っている6人の中に、さっきのルンという子もいた。
ボクに気づいたらしく、こっちを見てニコリと笑った。
その笑顔がかわいらしくて、ボクも微笑み返した。
 
 
こうやって見てみると、みんな歳が若そうに見える。
変なたとえだが、幼稚園の女の子が夏に水浴びをしているような、そんな光景がオーバーラップする。
 
 
「先輩、みんな子供みたいでかわいいっすね。」
「タク、おめえロリコン趣味だったのか?」
 
「いやあ、そんなことはないんすけど。まるで田舎の子供たちが、素っ裸で水遊びしているみたいじゃないですか。」
「そうだな、なんかあまりにも自然で、いやらしさを感じねえな。」
 
 
そう思ってみていると、ステージで2人の子が下を見ながら何やら話をしている。
そして1人の子が足を広げて、ぺったりと床に腰を落とした。
 
 
「先輩、あれ下から丸見えですよ。うわー、エッチだなあ。」
「ああやって、下の客をからかって遊んでるんだよ。」
 
「純朴な子供たちが水遊びしているイメージだったのに、吹っ飛んじゃいました。」
「あははは、彼女たちはけっこうしたたかだぜ。そんな子供だと思ってたら火傷するぜ。」
 
 
交代の時が来たようで、待機していた女の子たちが次々とステージに入って行った。
それまで裸で踊っていた子たちも服を着て、全員が学生のようになった。
曲が終わると、それまで踊っていた子がステージから出て行き、残った子たちはブラウスを脱いで黒いスカートとスニーカーだけになった。
 
 
ルンという子は、他に客がいるのか、階下へと降りていった。
ボクのところへ来るかと思っていたので、ちょっとがっかりした。
 
 
「先輩、これ何すか?」
「ああ、この鐘か?これはな、女の子全員にドリンクをご馳走したいときに客が鳴らすものなんだ。」
「へえー、そうなんすか。でも、そんなことをする客がいるんですかねえ?」
 
「たまにはな。客も気分が良くなって、みんな飲んでいいぞーって気になることもあるんだろうな。タク、おめえやってみないか?」
「ボクですか?いえいえ、遠慮しときます。」
 
 
そんな話をしていると、下からルンが上がってきて、ボクのところへやってきた。
隣に座っていいかと聞くので、OKと言って座らせた。
今度は、何も言わずにボクにくっついて座っている。
 
 
「ドゥユハヴサムドゥリンク?」
「テキーラー・OKマイ?」
「OK。」
 
 
ボクから飲み物を勧めると、テキーラが飲みたいと言う。
こんな若い子がテキーラを飲むのかと、それもまた驚きだった。
 
 
しばらくしてテキーラを持って来た彼女は、塩をマナオというタイのレモンにふりかけ、上を向いて絞りながら口に入れた。
そしてショットグラスを口にあて、テキーラを一気に流し込んだ。
目をつぶり、すっぱそうな顔をしてそれを飲み込み、今度は大きく目を見開いた。
 
 
そんな一つひとつの仕草が、何とも言えずかわいらしかった。
恋の始まりは、いつもそんなものなのかもしれない。
その時そう考えたわけではなかったが、後になって思い返してみると、このときすでにボクの気持ちは、彼女に傾いていたようだった。
 
 
しばらくして、また交代の順番が来た。
彼女はステージを指差して、踊りに行くとボクに言った。
彼女が椅子から降りて行こうとしたとき、ボクは無意識に彼女の腕をつかんだ。
ただ、行かせたくなかったのだ。
 
 
「ファーイ?ユー・ペイバー・ミー?」
「OK。アイ・ペイバー・ユー。」
 
 
成り行き上、ペイバーすることになってしまった。
自分でも驚くほかない。
 
 
「えっ、タク。おめえこの子をペイバーするの?」
「えーまー、そういうことになっちゃいましたねー。」
「おめえにしちゃあ、決断はえーじゃねーか。ロングか?」
 
「そうしたいんですが、彼女次第で。ロングターム・OK?」
「OK。フォーサウザント・バーツ・ナ。」
「OK。」
 
 
彼女は、服を着替えてくると言って、階段の方へ歩いて行った。
 
 
「タク、彼女がいるからホテルへは大丈夫だよな。明日の朝は、また今日と同じようにレストランで会おう。」
「わかりました。自分でも不思議なんすけど、勢いでペイバーしちゃいました。」
 
 
そうこうしていると、彼女は着替えてボクのところへやってきた。
どこにでもいるような、普通の女の子の格好だ。
 
 
「じゃあ先輩、お先に失礼しやす。」
「おう、頑張れな。おやすみ。」
「はい、おやすみなさい。」
 
 
先輩と別れて、二人で店の外へ出た。
近くのスクンビット・ソイ23でタクシーを拾い、マックスホテルへ行くようにと彼女が言った。