次の日の朝、ボクがホテルのレストランへ行くと、マサ先輩はもう朝食を食べ始めていた。
 
 
「先輩、おはようございます。早いっすねえ。」
「おう、おはよう。昨夜はどうだった?」
 
「実は彼女、まだボクの部屋で寝ているんです。」
「えーっ!帰さなかったのー!?」
 
「えーまー。彼女がまだ眠たいって言うもんで。」
「それでおめえ、これからどうすんの?」
 
「はあー、まだ決めてませんけど、できたら彼女とずっと一緒にいようかと。」
「ふーん、はまっちまったか。まあ、それもいいだろう。でも気をつけろよ。甘い顔をすると、みんな持って行かれちまうぜ。」
 
 
マサ先輩とは、とりあえず夕方の6時半にロビーで待ち合わせをすることになった。
それまでは単独行動だ。
部屋に戻ると、ドアの閉まる音でルンが目を覚ました。
 
 
「トゥデイ・ゴー・ショッピン・OK・ナ?」
「OK。フェアー?」
「エンポリアム。レコー、ムービー、OK・ナ?レコー、ゴー・バカラー・OK・ナ?」
「OK。OK。アイルゴートゥゲザー。」
 
 
ルンはお腹が空いていないというので、10時過ぎに一緒にエンポリアム・デパートへ行った。
まずは上の階の映画館へ。
ルンが見たい映画を選び、チケットを買って、時間が来るまでショッピング。
ルンがかわいいバッグを見つけ、ほしいというので買ってやることにした。
 
 
時間が来たので映画館に入った。
CMが終わって映画が始まる前に、客が起立したので驚いた。
ルンに促されて立ち上がると、王室をたたえる歌と映像が流された。
日本なら、映画の前に君が代が流されるようなものだろうか。
タイの国王や王室を崇拝する気持ちは、こんなところではぐくまれるのかもしれないと思った。
 
 
映画館の中は、異常に寒かった。
ボクはジーンズにTシャツだったので、寒くて腕に鳥肌が立つくらいだった。
ルンがぼくに抱きついて温めていてくれるので、それがありがたかった。
映画は英語で、タイ語の字幕が入ったものだったが、半分くらいしかわからなかった。
 
 
映画の後、ここにもあったFujiレストランで日本料理を食べた。
そしてさらにショッピング。
ルンが服をほしいとねだるので、何ヶ所か回って服を3つ4つ買った。
かなり疲れてきたところで時計を見ると、もう3時半になっていた。
 
 
「ゴー・バック・マイルーム・ドゥアイカンナ。レコー、ゴー・バカラー・ドゥアイカンナ。」
 
 
ルンが自分とボクとを指差してそう言うので、一緒にルンの部屋へ行って、それからバカラに行こうと言っているのだとわかった。
 
 
「ノーノー。アイハフトゥーカムバックホテル。アイミートマイフレンド。」
「OK。ゴー・バック・マイルーム。レコー、ゴー・ホテル。OK・ナ?レコー、ゴー・バカラー・ドゥアイカンナ。」
 
 
とりあえずルンの部屋に一緒に行き、それからホテルに戻ることになった。
そのあとは、また一緒にバカラへ行って、今夜もペイバーしてくれということのようだ。
ボクとしても、ずっとルンと一緒にいたかった。
明日の朝には日本へ帰らなければいけないが、それまで少しでも長く、ルンと一緒に過ごしたかったのだ。
 
 
ルンの部屋は、5階建てのアパートの一室だった。
ワンルームみたいで、部屋にはダブルベッド、冷蔵庫、テレビなどがあった。
ルンは買った物を手際よく片付け、シャワーを浴びた。
そのあとでボクにもシャワーを浴びろと言うので、ボクも汗を流した。
 
 
シャワーから出てくると、ルンはバスタオルを体に巻いたまま、ベッドに腰掛けていた。
ボクもバスタオルを腰に巻いたまま、ルンの隣に座った。
ルンはアルバムを取り出し、ボクに家族の写真などを見せてくれた。
ルンがボクに心を許しているのだと思うと、嬉しくて嬉しくてたまらなかった。
 
 
写真を見終わると、ボクはルンを抱きしめた。
離したくない。このまま日本に連れて帰りたい。
ボクは本気でそう思い始めていた。
ルンとボクは、ここでもまた一つになった。