どれほどの時間が過ぎただろうか。
気がつくと周りは、客でいっぱいになっていた。
そのほとんどが日本人であるかのように思えた。
 
 
これだけ日本人がいる中で、ボクはただ一人楽しめずに沈んでいる。
なんてバカなんだろう。
ルンに会えると信じてバンコクまでやってきたのに、その初日に夢を打ち砕かれるなんて。
もっと冷静に、会えないことも予想しておくべきだった。
いや、多少はそういう可能性も考えてはみたが、可能性を拒否していたのだ。
 
 
どうしよう。これから、どうしよう。
3泊4日、バンコクで過ごさなければ帰ることもできない。
ホテルに戻って、ずっとベッドにふさっていようか。
何もしたくなかった。本当に、ボクは大バカ者だ。
 
 
そんなとき、ステージからこちらを見ている子に気がついた。
なぜかこちらを見ていて、視線が合った瞬間にニコリと笑った。
どこかで見たような気がする。
記憶の糸を手繰り寄せていると、不意にルンと会った日の記憶が舞い戻ってきた。
 
 
あっ、あのときルンと一緒にやってきた女の子!
マサ先輩の方についたので名前は知らないけど、学生服を着て踊っていた子だ。
なぜあの子が1階で踊っているのか。
いや、そんなことはどうでもいい。
それより彼女なら、ルンのことを知っているかも。
 
 
一縷の望みを託して、ボクは彼女に尋ねてみることにした。
店員を呼んで、あの子をここへ呼びたいと告げた。
店員がその子の所へ行って何やら話をすると、その子は軽く肯いた。
 
 
店員はボクの所へ戻ってきて、彼女はダンスが終わったらやってくると言った。
彼女に何か飲ませろと言うので、ボクはすぐにOKした。
すると、自分にも何か飲ませろと言ってくる。
厚かましいなあとは思ったが、今はもめたくないと思って了承した。
 
 
しばらくしてダンスが終わると、彼女はボクの所へやってきて横に座った。
「マイネームイズ、タク。ナイスチューミーチュユー。」
「マイネーム、ニン。ハウアーユー。」
「ドゥユノーミー?ドゥユノー、ルン?」
 
 
挨拶もそこそこに、ボクは彼女がボクやルンを知っているかと尋ねた。
彼女は軽く肯いて、知っていると答えた。
良かった。手がかりがつかめるかもしれない。
ボクは心を躍らせながら、彼女にルンのことを尋ねた。