ニンは、ルンのことを知っているようだった。
ついでに、ボクやマサ先輩のことも覚えているらしい。
ボクは、たどたどしい英語で、ルンに電話してもつながらない経緯を説明した。
そして、ルンに会うためだけにやってきたことも。
 
 
「ユーアーヴェリーカインド。ジャイディーマークナ。」
「ノー。バット、アイラブ、ルン、ヴェリーマッチ。」
 
「ナウ、シーワーク、ローハイド。」
「サンキュー。サンキューヴェリーマッチ。アイルゴーゼア。」
 
 
ボクはニンに千バーツ札を握らせると、すぐに店員を呼んで精算した。
ニンをとても嬉しそうに顔をほころばせ、ボクの頬に軽くキスをして去っていった。
今度こそルンに会えるかもしれない。
お釣りの札を取り、その中から百バーツ札をさっきの店員にチップとして渡した。
多すぎるとも思ったが、そんなこともどうでも良いくらい嬉しかったのだ。
 
 
バカラを飛び出すと、ボクはソイカウボーイの中を小走りにアソーク通りに向かって歩いた。
ローハイドは、確か一番端の方にあったはずだ。
途中、いくつかの店の女の子から、「イラッシャイマセー」など日本語で声をかけられた。
でも、そんな呼び声に応えている余裕はない。
ローハイドを見つけると、ボクは迷わず飛び込んだ。
 
 
バカラとはうって変わって、ガランとした店内だった。
幻想的な海の底のような絵が、天井や柱などに描かれていた。
ここにルンがいるのだろうか。いや、いるに違いない。
ボーっと突っ立っているボクを、すぐに店員が案内してくれた。
 
 
店員に促されるまま、ボクは左側の壁際のソファーに腰を下ろした。
注文を聞かれ、シンハービールをたのんだ。
さて、これからどうしようか。
ともかくルンの姿が見えないか、探してみることにした。
 
 
ステージでは、素っ裸の女の子が10人くらい踊っていた。
前を手で押さえて隠したりしているものの、陰毛の生え具合などがすぐにわかってしまう。
以前来た時、ロングガンでも似たような光景は見ている。
しかし、それでも見ているボクの方が、何やら恥ずかしくなってくる。
 
 
そう言えば、ローハイドはロングガンの姉妹店だったはず。
なるほどそれで、似たような店の雰囲気なのだろうと思った。
 
 
ビールを飲みながら、ステージや客席にいる女の子の顔を確かめてみた。
しかし、ルンと思われる顔はどこにもなかった。
これは誰かに聞いてみるしかないのだろうか。
そう思っていた頃、反対側の隅にあるシャワーブースのようなステージに女の子が上った。
 
 
どうやらシャワーショーが始まるようだ。
3人の女の子が、下着姿でシャワーを浴びながら絡み合っている。
そして、少しずつ着ているものを脱いでいく。
遠目にそれを見ていたが、ふとした瞬間に、ボク頭の中に稲妻が光った。
あれは...ルン!