遠くてはっきりとは顔がわからない。
でも、あそこで踊っている子はルンに間違いない。
わずかに確認できる顔の輪郭で、肩の張り具合で、ボクはそれを確信していた。
 
 
ボクは、すぐに店員を呼んだ。
向こうのステージを指差し、あそこで踊っているのはルンという子だよねと聞いた。
店員の子がうなずいてそうだと言うまでの時間が、なんと長かったことだろう。
でも、これでもう間違いない。
ボクは、彼女をここに呼んでほしいと店員に告げた。
 
 
ショーが終わって、素っ裸になったルンがステージから降りてきた。
さっきの店員が、こっちを指差しながらルンに話をしている。
ルンはうなずいた後、バスタオルを体に巻きつけて奥へと下がっていった。
店員が戻ってきて、あとでやってくると伝えて行った。
 
 
しばらくして、ルンがやってきた。
懐かしい顔が、もう目の前にあった。
どれほど会いたかっただろうか。
ボクの目は少し潤み、すぐにでも彼女を抱きしめたかった。
 
 
ルンは、少しキョトンとした表情をしてボクの前に立っていた。
ボクが誰なのか、ひょっとしたらわかっていないのだろうか。
ボクは少し不安になりながら、ルンに話しかけた。
 
 
「マイネームイズ、タク。リメンバーミー?」
「???」
「3マンスアゴー、アイゴートゥーバカラ。ペイバーユー2デイズ。」
「オーイエース!アイリメンバーユー。ローングターム、ノット、シーユー。」
 
 
ルンは、やっとボクのことを思い出したようだった。
ボクは、日本から何度も電話したことを話した。
すると彼女が言うには、あれからすぐ、水に落として壊してしまったのだと。
それで、電話番号が変わってしまったということらしい。
 
 
にわかには信じがたい理由だったが、でもそんなことはもうどうでも良かった。
ともかく今、ボクの目の前にはあのルンがいる。
涙ながらに別れたあの日、ボクの腕の中にいたルンが、こうして戻ってきたのだ。
 
 
しばらくルンと話をして、一緒にホテルへ行こうとルンに言った。
ルンはすぐにそれを承諾したので、ボクはペイバー代を支払った。
ルンが着替えてくる間に、飲み物代を精算した。
あとはルンと一緒にホテルに戻るだけだ。
3泊4日の旅行が無駄足にならなかったことに、ボクは心から安堵していた。