ルンがシャワーを浴びた後、ボクもバスルームに入った。
冷静になった頭で、ボクはルンに話すことを考えていた。
どうやったら穏やかに話ができるだろうか。
ぼくの目的はルンを責めることではなく、ルンと愛情関係を築きたいだけなのだから。
 
 
バスルームから出ると、ルンはテレビに熱中していた。
しばらく横に座っていたが、ボクには何の関心も示そうとしない。
ついに痺れを切らせて、ボクはルンに話をした。
 
 
「以前、1万バーツを貸したよね。忘れていないよね?」
「何、あなた。ケチね。たった1万バーツくらいで。そんなに言うなら返すわよ。」
「いや、そういうことじゃないんだよ。ただ忘れてないことを確認したかっただけだから。」
「私、ケチな人は嫌いよ。あなたは優しいから好きだったけど。」
「ごめん。怒らせる気はないんだよ。別に返してくれということじゃないんだから。」
 
 
ルンは、すっかり機嫌を損ねて黙ってしまった。
ボクは、話の切り出し方を完全に失敗したと後悔していた。
どうしてお金の話を先にしてしまったのだろう。
そうじゃなくて、この3ヶ月どれだけルンのことを心配してたかを話したかったのに。
 
 
突然、ルンは起き上がってバスルームへ行った。
しばらくすると着替えて出てきて、ボクの前に手を突き出した。
帰るから金をくれということらしい。
貸した金を返さないでおいて、そういう金の請求の仕方をするのか。
 
 
ボクは少し腹が立ったものの、ウエストバッグから財布を取り出した。
そこでボクは躊躇した。
前日と同じでショートになるのだが、前日は久しぶりの再会の嬉しさで、3千バーツをあげたのだった。
通常なら2千バーツ、いや1千5百バーツでもいいはずだ。
 
 
財布から千バーツ札3枚を取り出して躊躇していたら、ルンはサッとボクの手から3千バーツをくすねた。
そして、礼も言わずに部屋の外へ飛び出して行った。
「おいっ!」と出かかった声を飲み込んで、ボクはルンを見送った。
 
 
何なんだ、この仕打ちは。
どうしてボクが、こんな目に合わなくてはならないのだろう。
ただルンのことが心配で来たのに。
自分自身が情けなく、哀れで、かわいそうで、仕方がなかった。
ボクはベッドに突っ伏し、声をあげずに泣いた。