次の日、私はまたゴイさんへ電話をかけました。
電話代が高いので、彼女からかかってくることはありません。
いつも私から彼女の携帯電話へかけているのです。
 
 
彼女は、前日とはまったく違って優しい口調でした。
私も日を置いたので冷静になっており、この日はいつも通りに話ができました。
お寺を5つ回って疲れたという話にも、彼女は楽しそうに相槌を打ってくれたのです。
来月にはまた、1週間ほどタイに行くと言うと、彼女は飛び上がらんばかりに喜んでくれました。
これでまた今までどおり。そう思ったのでした。
 
 
翌月私は、タイへ行きました。
バンコクのスワンナプームには、ゴイさんが出迎えに来てくれます。
いつもそうやって空港で出会い、タクシーで建てたばかりの家へと向かうのです。
 
 
しかしこのときは、出迎えてくれたのがゴイさんだけではありませんでした。
隣に男性が立っているのです。
いつもは飛びついてくる彼女が、このときはなぜか落ち着いています。
彼女は、その男性を私に紹介しました。お兄さんだと。
 
 
その男性が運転する車に乗り、我々は家へと向かいました。
彼女の話では、お兄さんは田舎から出てきて、バンコクで働いているのだそうです。
それで泊まる場所がないので、一緒に暮らしているのだと。
お兄さんも一緒なら安全だからと、彼女は私に説明したのです。
 
 
その日は、3人で一緒に食事をしました。
お兄さんがいるとは知らなかったので、彼へのお土産はありません。
それで、私が飲むつもりで買ってきたウイスキーを、お土産代わりにあげたのでした。
それにしても、お兄さんが一緒にいるなら電話で話してくれればいいのに。
そう思ってもみたのですが、言葉や文化の違いもあろうかと、あえてゴイさんには言いませんでした。
 
 
その夜私は、久しぶりに彼女を抱いて寝ました。
この年になって抱いて寝たい女がいることは、なんと幸せなことでしょうか。
満足感に包まれながら、私はベッドで眠りについたのです。
彼女のお兄さんは、隣の寝室で寝ていました。
物音が聞こえるのではと少し心配もしましたが、その最中はそれほど意識することはありませんでした。
 
 
次の日の朝、私が目覚めるとゴイさんはもう起きていました。
リビングへ行くと、彼女は朝食の支度をしていました。
お兄さんはどうしたかと聞くと、もう仕事に出かけたとのこと。
夕方までは戻ってこないという話でした。
 
 
彼はいつまでこの家で暮らすつもりなのか、ちょっと不安になりました。
少なくとも私がここに移住してくるときには、出て行ってもらわなくてはなりません。
その場合、彼が暮らすアパートのデポジットを、私が出してやってもよいと思いました。
多少お金がかかっても、お兄さんと同居することは避けたいと思ったのでございます。