茫然自失のまま、ボクはホテルまで戻ってきてしまった。
部屋のベッドに靴を履いたまま横たわり、天井を見上げた。
どうしたらいいのだろうか?
ずっと考えてきたことを、さらにここでも考えた。
 
 
結論が出たわけではなかった。
ただ無為に過ぎて行く時間に焦りを感じたのだ。
そう、ただもう我慢できなくなったのだ。
ボクは携帯電話のボタンを押し、エーに電話をかけた。
 
 
何ごともなかったかのように、エーは電話に出た。
今は、妹たちとパーティーをしているという。
 
 
「さっき、MBKへ行ってたよね。西洋人の男性と2人で。」
「えっ、...。」
「ボクは見たんだよ。映画を見たんだろ?」
「...」
「もしもし、何とか言いなよ。どういうつもりだよ。どうしてボクにウソをつくの?」
 
 
ボクは必死に問い詰めたが、エーは返事をしなかった。
やはりそうだったのだ。
少なくとも、見間違いではなかったのだ。
0.1%くらいは、見間違いかもということを期待していた。
でも、そんな奇跡は起こらなかった。
 
 
「ねえ、どうして黙ってるの?恋人同士じゃなかったの?愛していると言ったのは、嘘だったの?」
「...ううん、本当よ。愛してるわ。」
「じゃあ、どうして?どうして裏切るの?」
「あなたには、わからないわ。」
 
 
そう言うと、エーは電話を切った。
いったいどういうこと?まだ話の途中なのに。
ボクは再びエーに電話をした。
しかし、エーはとらなかった。
そしてそのうち、電源まで切ってしまったようだった。
 
 
どうしてこんなことになるのだろう。
今日は、エーの誕生日なのに。
本当なら、今日2人でお祝いをして、結婚を決めるつもりだったのに。
 
 
ひょっとしたら、ボクは騙されていただけなのか?
ボクから金を巻き上げることが目的で...。
いや、そんなはずはない。そうは考えたくない。
 
 
思うようにならないエーとの関係に、ボクはイラついた。
何かにあたりたかった。
しかし、せいぜいベッドを蹴飛ばすことしかできなかった。