「マサルさんは、愛情とは何だと思っていますか?」
「えー、そうですねえ。好きになることとか。」
「それだけですか?」
「大切にしたいという思い。守りたいという気持ちもかな。」
「何を大切にし、守りたいのですか?」
 
 
「相手ですかね。相手の女性。」
「相手の何を大切にしたいのですか?」
「...」
 
 
次々と掘り下げてくる相沢の質問に、ボクは困ってしまった。
そんなことは普段、考えたこともない。
 
 
「いいですか、マサルさん。そこが重要なのですよ。たいていの人は、漠然としか考えていません。だから勘違いするのです。本当は愛してもいないのに、愛しているかのように。あるいは愛されているのに、愛されていないかのように。」
 
 
相沢の論は、一気に飛躍した。
もうボクの回答を求めてはいないと感じたので、ボクは相沢の言葉に耳を傾けることにした。
 
 
「大切にするのは、相手の自由や相手らしさです。その人がその人らしくしていることを望み、それを守ってあげたいと願うこと。それが愛情です。自分の希望を押し付けることじゃありませんよ。相手が幸せであることを、自分の希望にするのです。」
 
 
一気にまくし立てる相沢の言葉には、迫力があった。
ただ、そこからはまだ、具体的な姿が見えてきてはいなかった。
 
 
「マサルさんは、結婚することがエーちゃんを幸せにすることだと言いましたよね?エーちゃんに確認しましたか?」
「いえ、聞いてはいません。ボクがそう考えたんです。」
「そうでしょ。まず聞かなきゃ。相手には相手の考え方があります。それを尊重することが、相手らしさを大切にするということでしょ。」
 
 
「そうだったかもしれません。でも、それじゃあボクの想いはどうなるんですか?エーをここで働かせたくなかったという想いは。」
「つまり、結婚は手段だと言いたいのですね。マサルさん自身の希望を叶えるために、エーちゃんを利用しようとしたわけだ。」
「ひっどいなあ、その言い方。でも、そういう面もあったかもしれません。」
 
 
少し相沢の話し方に慣れてきたせいか、以前ほど腹立たしさは感じなかった。
「悪い」のではなく、「乗り間違えた」だけなのだから。