彼女は、ショートにするかロングにするかと聞いてきた。
どこか事務的で、味気ない気がする。
ボクはただ、彼女と一緒にいたいだけなのに。
しかし、それも仕方がない。
彼女にとっては、ボクは客の一人に過ぎないのだから。
ボクは彼女と長く一緒に過ごしたかったので、ロングを選択した。
 
 
「4,000バーツ。OKナ?」
「OK」
 
 
彼女に対して、値下げ交渉をするつもりはなかった。
ボクにとっての彼女は、十分に一晩4,000バーツ以上の価値がある。
 
 
それからショーが終わる12時過ぎまで、ボクは席でショーを楽しんだ。
ショーの合間に、エーはボクのところへ来て座った。
テキーラ、コーラ、テキーラと、そのたびに何かを注文した。
また、ときどき馴染み客が来たからと、そちらへも顔を出した。
やはりそこでも、何かしらご馳走になっているようだった。
 
 
今日は、ボクがキープしたはずなのに...。
そんな思いが、はからずも心の底から頭をもたげてきた。
 
 
エーの態度に不満はあるものの、嫌いになったわけではない。
むしろ逆に、ボクの意のままにならないと感じることによって、よりいっそう彼女に対する想いが募った。
 
 
ショーは、いつものようにすばらしかった。
あっと言う間に時間が過ぎ、最後のショーが始まった。
最後はいつも、このショーだ。
鞭を持ったダンサーが、一人で踊る。
SMショーの一人バージョンみたいだ。
 
 
ポールの周りを回転したり、手を激しく床に叩きつけたりする。
激しさと、切なさが入り交じったような曲調。
最後は、前後に大開脚し、頭を床につけんばかりに前に深く倒して終わる。
その瞬間、「今日も終わったな」と感じるのだ。
 
 
気がつくと、エーが私服に着替えてやってきた。
顔は、ニコニコと笑顔だ。
だが、今日もひと仕事終わったという、爽やかなものではない。
「私、これからロングなの。」と、さも自慢したげな顔だ。
 
 
ボクはもうすでに精算を済ませていたので、そのままエーと一緒にバーの外に出た。
タクシーで行くのかというエーの問いに、うんと頷いて答えた。