契約が成立したことで、ボクはホッとしていた。
これで彼女はボクのものだ。
ボクだけの天使、エー。
彼女をそのままベッドに押し倒し、上からそっとキスをした。
 
 
エーはふいをついてボクを押し倒し、逆にボクの上に乗っかってきた。
ボクは、エーがしたいようにさせた。
上からボクを見て、思いついたようにキスをする。
 
 
ボクがあまり反応しないことに対して、エーは逆に闘志を燃やしてきた。
ボクの顔の横に自分の顔を埋めた瞬間、ボクの耳を甘噛みしてきた。
生まれて初めての感触に、ついにくすぐったくて堪えられなくなった。
 
 
「わかった。まいった。もうやめてくれ。」
そう言ってボクは、エーの下から逃げ出した。
そうはさせないとばかりに、エーはボクの後ろから抱きついてくる。
しっかりと抱きついたエーの体を背中に感じて、ボクは幸せに満たされた。
 
 
 
次の日の朝、6時にホテルを出発した。
空港へ向かうタクシーの中で、エーはボクの腕にずっとしがみついていた。
 
 
「もう、今日からバーには行かないの?」
「それは無理。だって、ママさんに話さないといけないし。」
「そうだね。でも、もう他の男にペイバーされるのはダメだよ。」
「わかってるわ。」
「じゃあお金は、日本についてから口座に振り込んでおくから。」
「うん、ありがとう。」
 
 
真っ暗な中でホテルを出たが、空港に到着する頃は、もうかなり明るくなっていた。
バンコクの太陽は、昇るのも落ちるのも速い。
 
 
空港に到着すると、すぐにチェックインを済ませた。
朝の空港は、それほど混んではいない。
コーヒーショップで、エーとの最後の時間を過ごすことにした。
 
 
「ねえ、毎日メールをちょうだいね。」
「えぇーっ!毎日!?」
「ダメ?だったら別れる。」
 
 
本当はそんな気もないくせに。
そう思いながら、彼女がすねて甘えてくることが嬉しかった。
 
 
「わかったよ。毎日メールを送るよ。」
「浮気しちゃダメよ。」
「浮気なんかしないよ。エーも、浮気するなよ。」
「もちろんよ。」
 
 
恋人たちの甘い時間は、あっと言う間に過ぎて行く。
出国審査のゲートの前で、ボクたちは別れることにした。
そっとキスをしてくるエーを、ボクは抱きしめた。
絶対に手放したくない大事なもの。
その想いが伝わるようにと、少し力を入れて抱いた。