ボクは、エーとの会話を中断した。
すぐには結論が出そうに思えなかったからだ。
それに、このまま続けていたら、きっとボクは怒り出す。
そういう予感がしたときは、他のことをするに限ると、今までの経験からわかっていた。
 
 
ともかく食事に行こうと言って、ボクたちは出かけた。
エーは、移動中もあまり話をしなかった。
そんなエーと一緒の食事は、美味しいものではなかった。
 
 
9時過ぎに、ナナプラザのエンジェルウィッチへ行った。
ショーまでまだ時間があるためか、それほど混んではいなかった。
ボクはソファー席に座り、エーは準備があるからとバーの奥へ行った。
 
 
10時少し前になると、客が一杯になってきた。
3人組の客が来たとき、もうまとまって座れる場所がなくなっていた。
ウエイトレスがボクのところへ来て、ソファー席を譲れと言った。
たしかに、一人で占領していてはまずいだろう。
そう思って、彼女に促されるままにステージサイドのカウンター席に座った。
 
 
ボクの隣に、中年の日本人が一人で座っていた。
ステージへの上り口のすぐ隣だ。
日本人の客の隣は嫌だな。
そう思ったが、他に座れそうな場所はなかった。
 
 
すぐに照明が落ち、ショーが始まった。
ショーダンサーが登場して、いつものショーがスタートした。
ボクは、今までになくショーを楽しめないでいた。
やはり、エーのことが頭を離れなかったのだ。
 
 
ショーが進むにつれて、隣の日本人客が気になってきた。
ニコニコと笑顔でショーを見つめているが、ショーが終わったときに何やらゴソゴソとしている。
よく見ると、ポケットから何かを取り出して、ステージから降りてくるショーダンサーに渡しているのだ。
 
 
ダンサーたちは、それをお礼を言いながら受け取っている。
いくらかわからないが、どうやらチップを渡しているようだ。
その客は、ただチップを渡すだけで、女の子を席に呼ぶことはなかった。
まるでそうすることが当然かのように、チップを渡しているだけなのだ。
 
 
ボクが彼の行動に注目していることを、彼自身も察知したようだった。
ボクの方を見ると、ニコッと微笑んでビール瓶を突き出した。
あわててボクもビール瓶を持ち上げ、二人で乾杯をすることになってしまった。